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小林英介のブログ

元フリーランスで現在は業界紙記者である小林英介が、てきとーにニュースや好きな野球について書くブログです。

マスコミは世論調査を正確に実施すべきだー小林英介の放言硬論ー

 自民党総裁選挙は来週水曜日、29日に開票を控える。候補者らは討論会に参加し活発な議論を繰り広げ、報道各社も総裁選挙に関連した情報を発信し続けている。特に自民党総裁選挙が告示される前後から、テレビの政治ニュースは総裁選一色。野党の話題は隅っこに追いやられ、存在も目立たなくなってしまった。総裁選が終わればすぐに選挙がある。野党は大汗をかいているに違いないだろう。

 

最近目立つ世論調査の記事
 特に最近、「世論調査」の記事も目立つ。世論調査内閣支持率政党支持率を中心に、政策の是非、評価などについて「賛成」「反対」「どちらでもない」「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」などの選択肢を選んで回答する。総裁選に関する世論調査では「誰がこれくらいの支持率で、この候補とはこれくらいの差を広げているー」といった具合だ。一度目にしたことがある読者もいるだろう。

 

総裁選の投票資格があるのは?
 特に総裁選の世論調査の記事について、しっかり読んでいるのか?理解しているのか問いたい。

 まず、自民党総裁選挙の投票資格があるのは誰なのか確認したい。投票資格があるのは自民党の国会議員②全国にいる党員・党友だ。しっかりとした世論調査のデータを得たいのであれば、①②を対象とした調査を行えばいいだけのこと。自民党の党員・党友ではない人に調査しても、はっきり言って意味がないのだ。

各社の世論調査を見る
 では各社の世論調査記事を見ていこうではないか。果たして①②を対象とした調査が行われているのか。

 

毎日新聞の調査
 毎日新聞は18日に社会調査研究センターとともに世論調査を実施した。肝心の調査は「携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせ、携帯732件・固定311件の有効回答を得た」としている。携帯のSMSと固定電話の自動音声だった。どこから来たかわからないSMSで、リンクに入ってしまう人とは……と思ってしまうが、話題を戻そう。

 調査では次期自民党総裁に「誰に総裁になってほしいか尋ねた」。結果は以下の通り。


河野候補―43%
岸田候補―13%
高市候補―15%
野田候補―6%

 

このうち自民党支持層(この調査での自民党支持率は37%)では

河野候補―50%
岸田候補―14%
高市候補―25%
野田候補―3%

以上の通りだった。


毎日新聞では比較的、河野候補の支持率が高いことがわかる。その次点で高市候補、次が岸田候補、野田候補となっている。特に河野候補は自民党支持層での支持率が50%と半分。大変高い数字となっているが、自民党支持層37%内での数字。さらに調査対象は「携帯732件・固定311件」という限りなく狭い世界。「正確さ」でいえばよく分からない数字なのは明らかなので、信頼できるとは言えない。

 

産経・FNN(フジテレビ系)の調査
 産経とFNNは18、19日に「RDD(固定・携帯電話)」を利用して「全国の18歳以上の有権者1,116人」に世論調査を実施した。

菅首相の後任を選ぶ自民党の総裁選挙に、4人が立候補した。4人のうち、誰が新しい総裁にふさわしいと思うか」と質問。回答は以下の通り。


河野候補―52.6%
岸田候補―15.2%
高市候補―11.6%
野田候補―6.4%

 

調査方法はこちらも「固定・携帯電話」。1116人という調査対象が疑問になる。

 

ANN(テレビ朝日系)の調査
 ANNは18、19日に「固定・携帯のRDD方式」を用いて世論調査を行った。対象は「全国18歳以上の1911人で、有効回答は1060人」だった。

以下、調査結果。

 

「誰が次の総裁になることが良いか」

河野候補―48%
岸田候補―18%
高市候補―10%
野田候補―7%

 

また自民党支持層では
河野候補―53%
岸田候補―20%
高市候補―13%
野田候補―5%
だった。

こちらは河野候補が大人気。自民党支持層以外でも48%で、自民党支持層では半数を超え、次点に位置する岸田候補に大差をつけていると見て取れる。ただこの調査も調査対象が1060人。こんな少ない数で「世論調査だ!」と胸を張れるのがすごいと思うのだが。

 

日本テレビの調査

 日本テレビは17、18日に緊急電話調査を実施。対象は「全国の有権者のうち、自民党員・党友と答えた1010人」だとした。以下、調査結果。

 

河野候補―40%
岸田候補―21%
高市候補―15%
野田候補―5%
だった。

 

日本テレビは「全国の有権者のうち、自民党員・党友と答えた」人を対象に調査しているが、1010人は少し足りなく感じる。もう少し期間を確保し、調査した方がよかったのではないかと思う。

 

朝日新聞の調査
 朝日新聞は告示前(11・12日)に世論調査を実施。

 

「コンピューターで無作為に電話番号を作成し、固定電話と携帯電話に調査員が電話をかけるRDD方式で、11、12の両日に全国の有権者を対象に調査した。固定は有権者がいると判明した1042世帯から575人(回答率55%)、携帯は有権者につながった2027件のうち902人(同44%)、計1477人の有効回答を得た」としている。いわゆる電話だ。


以下、調査結果。

 

「新総裁にだれがふさわしいか」
河野候補―33%
石破茂氏16%。後に不出馬を表明)
岸田候補―14%
高市候補―8%
野田候補―3%
だった。

自民支持層では


河野候補―42%
岸田候補―19%
(石破氏13%)
高市候補―12%
野田候補―1%
だった。


無党派層でも
河野候補―28%
(石破氏17%)
岸田候補―11%
高市候補―6%
野田候補―5%


という結果だった。

 

河野候補がほかの候補を引き離す結果だったが、よく分からない調査も行っている。どうして「無党派層」への調査があるのかがわからない。前述したように、総裁選は「①自民党の国会議員②全国にいる党員・党友」に投票資格がある。そこを間違えてはいけない。

 

どうして調査対象が違うのか
 これまで見てきたように、一部を除いておかしな調査が行われていることを強調しなければならない。自民党支持層に調査しても、その人が①②でなければ意味がない。そう、各社が実施している調査は、この人がいいな~という「願望」である。正確な調査を行うのであれば①②に絞って調査すればよいのに、しない。いや、できない。やりたくないのだろうか。何か言いたいことがあるなら「正確な調査」を行えばよい。そうすれば私も評価すると思うが、いかがか。

 

 そして調査方法が「電話」であるのも見過ごせない。現代では、固定電話を置いている家庭があったとしても、その数は少なくなっている。総務省が公開した「令和2年度情報通信白書」によると、固定電話市場における全契約数は、「2019年度末時点で5,367万(前年同期比1.4%減)であり、引き続き減少傾向となっている」と報告した。

 また、2008年に5846万契約だった固定電話の加入契約者数は年々減少。2010年には5747万、2015年5585万、そして2019年には5367万だった。

 

 この調査傾向を参考に検討すると、今後も固定電話数が減少するのは目に見えている。さらにはスマートフォンの普及によって、固定電話を持たない世帯も増えるだろう。

 そのため、電話を利用した世論調査は高齢者など、比較的年齢が高い世代に偏ってしまう可能性がある。その可能性を限りなく少なくするには、インターネットを利用した世論調査も必要になるだろうが、一部候補・政党の支持者が恣意的に調査に答えるデメリットも想定される。そこのバランスをどのようにしてとるのかが大切だ。

 

公平な世論調査・選挙を

 私が何かと指摘しているのは、とにかく「公平・公正」に選挙を実施してほしいからだ。そうでなければ平等ではなく、「出来レース」となる。そんなものは面白くない。世論調査を実施するなら、選挙のルールに則って実施してほしい。それができないのなら、実施するべきではない。ただそれだけだ。