いよいよ始まった自民党総裁選
※岸田候補の選挙区と高市候補の選挙区が逆になっておりました。正しくは岸田候補が広島県第1選挙区、高市候補が奈良県第2選挙区でした。お詫びして訂正します。申し訳ございませんでした。
自民党のトップは「総裁」(そうさい)と呼ばれる。総裁は事実上の内閣総理大臣。総裁まで上り詰めれば、地位を確固たるものにできる。
9月頭、99代首相の菅義偉が次期総裁選挙に立候補しないと表明した。事実上の退陣である。自民党総裁の任期は今月末まで。それまでに総裁選挙を実施して新しいリーダーを決める必要があるのだ。
総裁候補は今のところ3人
9月11日現在、総裁選の立候補者は3人いる(年齢は9月11日現在)。
①岸田文雄
1人目は岸田文雄(岸田派)だ。1957(昭和32)年生まれの64歳。早稲田大学法学部卒業後、(株)日本長期信用銀行(長銀。現在の新生銀行)入社。その後衆議院議員秘書を経て1993(平成5)年の第40回総選挙にて初当選。自民党青年局長や経理局長、厚生労働委員長などを歴任した後、2007年の第1次安倍改造内閣で内閣府特命担当大臣に任命。初入閣となった。
2012年には現在の岸田派となる宏池会会長に就任。同年の第2次安倍内閣等で外務大臣・防衛大臣、そして自民党政務調査会長として執務にあたった。
②高市早苗
2人目は高市早苗(無派閥)。1961(昭和36)年生まれで60歳。神戸大学経営学部経営学科を卒業した後、松下政経塾へ入塾。卒塾後アメリカでの勤務を経て、1993(平成5)年の第40回総選挙で初当選。1998(平成10)年の小渕内閣で通商産業政務次官となる。その後衆院文部科学委員長、遊説局長となった後に落選。近畿大学経済学部教授として勤務し、2005(平成17)年の第44回総選挙で当選。
2006(平成18)年の第1次安倍内閣で内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、科学技術政策、イノベーション、少子化・男女共同参画、食品安全)に任命。初入閣。自民党繊維・ファッション産業政策小委員会委員長、政務調査会長、総務大臣、内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度)等を務めた。
③河野太郎
3人目は河野太郎(麻生派)だ。1963(昭和38)年生まれの58歳。慶応義塾大学経済学部に入学するものの、2か月で退学してアメリカへ行き、ジョージタウン大学に入学。ポーランド中央計画統計大学へ留学した後、ジョージタウン大学を卒業した。
アメリカから帰国後、富士ゼロックス(株)に入社(現、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)。シンガポール赴任を経験した。その後、日本端子(株)での勤務を経て、1996(平成8)年第41回総選挙で初当選。
2002(平成14)年に総務大臣政務官に就任。法務副大臣、衆院外務委員長等を経て2015年の第3次安倍改造内閣で第75代国家公安委員会委員長、行政改革担当、国家公務員制度担当、内閣府特命担当大臣(防災、規制改革、消費者及び食品安全)に就任。初入閣となった。
そして2017年に外務大臣、2019年に防衛大臣に就任し、2020年の菅内閣で行政改革担当、国家公務員制度担当、内閣府特命担当大臣(規制改革・沖縄及び北方対策)、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種担当に任命されている。
以上、3候補の略歴である。まず注目したいのが派閥である。無派閥の高市候補を除いて、岸田候補は岸田派、河野候補は麻生派に所属している。
宏池会と志公会
岸田派は別の名を「宏池会」(こうちかい)と呼ぶ。1957(昭和32)年に元首相の池田勇人(所得倍増計画でおなじみ)の後援会として結成された。1971(昭和46)年にはこちらも元首相の大平正芳が第3代宏池会会長、1980(昭和55)年には宮澤喜一が就任するなど、首相経験者のポストとして名を馳せた。
ところが、1998(平成10)年に加藤紘一が第6代会長に就任してからは首相を輩出できていない。現会長である岸田候補は2012(平成24)年、9代目に就任。宏池会の隆盛に向けて期待は高まっている。
麻生派は別名「志公会」(しこうかい)という。2017(平成29)年結成の比較的新しい派閥だ。2017年7月3日配信の朝日新聞デジタルの記事によると、「自民党の麻生派(44人)と山東派(11人)、谷垣グループから離脱した佐藤勉・衆院議院運営委員長が率いるグループ(6人)の大半が合流」した派閥。甘利明元経済再生担当大臣や河野候補、船橋利光、今井絵理子らが所属している。
志公会の前身といってもいいのが2006年結成の為公会(いこうかい)だ。名前は『古代中国の経書・礼記の一節にある、為政者の政治理念を説く言葉、「天下為公」に由来するもの』(麻生太郎オフィシャルサイトより)。そして河野グループ。河野候補の父である河野洋平が結成した派閥として有名だ。
派閥は総裁と同じく、自民党にのみ存在する。他にも二階派、細田派などがある。これらの派閥同士で闘争・駆け引きを行って、党内・内閣における派閥の存在感を高めていくのだ。
無派閥の高市候補は?
しかし、ここで一つ気になるのが、無派閥の高市候補だ。無派閥となれば総裁選の戦い方は難しくなる。味方がいないに等しい。
しかしながら、高市候補は安倍元首相とつながりがある。それは「保守」という考え方だ。
政治的スタンスを表す際などに用いられる「保守」「革新」「右翼」「左翼」等の言葉。そのうち、日本の古き良き伝統を守ろうなどというのが「保守」にあたる。安倍元首相は、自民党のグループ「保守団結の会」顧問を務める。同会は自民党の保守系の議員グループで、2020(令和2)年に結成された。
また2020年9月7日に配信された朝日新聞「WEB論座」(戦後の「保守本流」と異なる安倍首相の保守主義が日本政治にもたらしたものー宇野重規 東京大学社会科学研究所教授)の記事によると、「いうまでもなく、安倍首相は保守主義者を自認する政治家である」としながらも「いかなる意味において、安倍首相が保守的であるかは自明ではない」とあった。
まあ様々な意見があるとしても「保守を自認」しているのだから、保守なのだろう。
さらに9月8日の時事ドットコムによれば「安倍氏が高市氏支援に回るのは、退陣する菅義偉首相が憲法改正などに強い関心を示さず、保守層の離反を懸念しているためとみられる」という。
総裁選に注目
総裁選は17日に告示される。29日の投票まで情勢がどう動くかわからないが、誰が次の国のリーダーになるのか。注意してニュースを見たいと思う。