国内ランキング
にほんブログ村 ニュースブログ 時事ニュースへ
にほんブログ村

小林英介のブログ

元フリーランスで現在は業界紙記者である小林英介が、てきとーにニュースや好きな野球について書くブログです。

「百年記念塔を守らなければならない」ー団体ら反対も道が記念塔の解体に着手、その経緯を振り返る

 北海道にあるJR札幌駅から旭川方面の特急に乗り、札幌駅を出発する。雲一つない秋空の中、特急が函館本線の「森林公園」駅に差しかかると、進行方向の右手には大きな塔が見えてくる。

 その塔の名は「北海道百年記念塔」(以下、記念塔)。高さ100メートルもある塔であり、「道民がみんなで築く躍進北海道のシンボル」(道公表の資料による)として建てられ、総工費5億円のうち半分は道民などの寄付で賄われている「私たちの記念塔」と言っても過言ではない記念塔なのだ。

 しかし記念塔を管理する道は記念塔を解体する方針で、道は本稿執筆時の11月7日に塔の周りに看板などを設置。実質的に解体工事に着手したことになる。 

「百年記念塔を守らなければならない」

 「私たちはこの百年記念塔を守らなければならない、北海道の心を守らなきゃいけない」。11月7日、記念塔解体に反対する団体が記念塔を前にして抗議活動を行った。

 北海道百年記念塔は北海道百年記念事業の一環として昭和41年(1966)に建設を決定、翌々年に着工したのち昭和45年(1970)9月に完成した。「北海道の開拓につくした先人の苦労への感謝と、未来を創造する道民の決意を示すため」(道HP)として建設され、これまで道民の「シンボル」として親しまれてきた。

 しかし道は平成28年(2016)、平成30年(2018)で「北海道」命名150周年を迎えることを受けて「北海道の歴史文化施設活性化に関する懇談会」を開催。「国内外からの誘客促進のためのアイデア」等、幅広い意見が出たという。

 なお、同懇談会は平成28年10月から29年10月まで1年間、5回にわたって開催され、同年11月に百年記念施設の再生に向けた構想をとりまとめた「百年記念施設の継承と活用に関する考え方について」を策定。百年記念施設を「自然・歴史・文化体感交流空間として再生することを目指す」として半ば強行的に再生することを明記している。

 特に記念塔については、道民の幅広い意見も踏まえ、今後の検討状況によっては「様々な形態」が考えられ、「当該地域の景観にも十分配慮する」とした。この時点で、何となくではあるが記念塔を「解体」するニュアンスが濃くなっていると感じるのは、私だけだろうか。

専門家などからは「解体」の声が多数も、学生からは有意義な意見が

 道は平成30年の4月から6月の間に住民等に対してアンケートを、同年4月から7月までの間には専門家へヒアリングを行っている。

 このうち専門家ヒアリングでは、「地域のシンボルとしてできれば残してほしい」といった意見のほか、「耐震性、耐風性の担保など安全性が第一」と解体に賛成する意見もあった。道の資料を見た限りでは、専門家の「主な意見」としては「解体賛成」の意見が多かったように感じた。

 一方、同年5月に学生を対象にして行われた大学での出前講座では、様々な意見が出されたが、「道民の意見を聞いた上で検討するのがいい」という意見もあった。学生よ、まさにその通りだろう。本当はこのようにあるべきなのだが、道の考えは全く違うようだ。

 驚くべきは同時期に開かれた「ほっかいどう歴史・文化・自然『体感』交流空間構想検討会議」から出た意見で、「高度成長期の当時とは時代背景は大きく異なる」「インフラの大更新期が迫る。将来世代の負担で維持すべきものにはならない」「解体した後、跡地には何もつくらない」など、厳しい意見が相次いだが、あまりにも極端すぎやしないだろうか。

 特に「跡地には何も作らない」など言語道断。なぜそのような意見が「専門家」から出てくるのか理解できないが、道は同会議を3回開催。平成30年9月に「ほっかいどう歴史・文化・自然『体感』交流空間構想素案」を公表し、道民に広く意見を聞く「パブリックコメント」を実施し、同年12月に道は同構想を策定した。

住民説明会では苦言相次ぐ、道は解体を正当化

 時は過ぎ今年2月、道は「北海道百年記念広場(仮称)の整備等に関する説明会」をオンラインで3度開催。道が考え方を説明した後、参加者からの質問に担当者が回答したのだが、その回答は「回答」になっていなかった。

 いくつかのやり取りを紹介しよう。例えば

 

「疑問や質問がある分だけ解体を形式で則って着々と進めるだけが行政の役目とは思えない。立ち止まり、多くの知見を取り入れて進めることが北海道を世界に誇れる新しい大地と考え直す方が道民のためになるのでは」との質問に対しては、

 

「記念塔のあり方の検討にあたりましては、様々な分野の専門家や有識者のご意見を伺うとともに、道民の皆様から寄せられたご意見を踏まえまして、十分に時間をかけて慎重に検討を重ねてきたところ」としたうえで、「記念塔の解体に関する方々の思いですとか、様々なご意見につきましては、真摯に受け止めた上で、道の考え方をご理解いただけるよう今後とも努めてまいります」

 

と回答。あくまで「道の考え方」が主眼にあり、「理解いただけるよう」などと変更するつもりはないと強調した。また

 

「専門家有志による反対意見が出されているにもかかわらず、反対意見の検証はなぜされないのか」

 

との質問には令和2年(2020)9月に記念塔の内部見学会を開催したことに触れたうえで

 

「公園を利用される方々の安全確保や将来世代への負担軽減等の観点から、解体もやむを得ないと判断したことなどにつきまして、繰り返しご回答」「存続に向けた活動は、他の団体等においても行われていることを承知しており、今後も道の考え方についてご理解いただけるよう努めてまいる考え」

 

などと回答している。説明会では、賛成する住民があまりいないほど、記念塔の解体に反対する意見や、道への批判が相次いだ。ある意味、説明会は「炎上状態」といっても良い状態だった。

鈴木道知事は「ご理解いただきたい」と解体ありき

 この道の姿勢を受けてなのか。2月4日の知事定例記者会見では、記念塔に関する質問がなされた。とある記者からは

 

「知事は前回の会見で、『道民に丁寧な説明をした』と説明した。しかし取材をしたところ、町内会で説明会を開いていないなどと話を伺っている。知事の今の認識をお聞かせ願えれば」

 

などと質問が飛んだ。しかし鈴木直道北海道知事は

 

「道民ワークショップを3回、出前講座を2回開催させていただいた」と述べたうえで「アンケート調査などを通じ、さまざまなご意見を踏まえて交流空間構想の案を策定した」「道では交流空間構想の策定後も道民、存続を求める団体に対して、できるだけ丁寧な説明に努めてきた」

 

と実績を強調。そして3回にわたる説明会で

 

「解体の判断に至った道の考え方、今後の周辺広場の整備の方向性などについてあらためて説明し、皆さまにご理解をいただきたい」

 

とあくまでも解体ありきでものごとを進めていくとした。

本当に「道民みんな」の意味を理解しているのか

 道はなぜそこまでして記念塔の解体を進めたいのだろうか。「道民がみんなで築く躍進北海道のシンボル」というコンセプトはどこへ行ったのか。「みんな」で築いたのであれば、「みんな」で解体について議論すべきではないのか。工費の半分は道民が賄っていると本稿の冒頭で触れたが、道には「道民の記念塔」を残す考えがないのだろう。道のやり方はあまりにも一方的で、なぜこういったやり方ができるのか不明だ。

 解体に反対する人々はクラウドファンディングを実施しているといい、本稿記者が確認した段階で、目標金額300万円に対して698万円もの支援総額となっている(確認した対象は「解体差し止め住民訴訟」)。

 道は粛々と解体作業を進めていくだろう。しかし反対派は諦めていないはずだ。私も解体は反対であるので、本稿を執筆した。「解体反対」の声を上げている人々を心から応援しつつ、本稿を閉じることとしよう。

 

※酔っ払いながら書きましたので、もしかしたら間違いがあるかもしれませんし、薄〜い記事になっていますね。とにかく、私の思いが伝われば。ご了承を。