夏の甲子園を振り返る②ー2日目までー
8月29日に幕を閉じた第103回全国高等学校野球選手権大会は、雨で7日の順延、新型コロナウイルスの影響など、さまざまな問題が浮き彫りになった大会だった。
前回は甲子園初日の開会式・選手宣誓を振り返った。今回は第1日・2日目を取り上げる。
開会式が終わった後の1日目第1試合は、米子東(鳥取)と日大山形(山形)の対戦。「選手権大会」の名前で、ようやく試合観戦できると思うとうれしかった。
当ブログの過去記事を参照しながら、試合を振り返っていきたい。(断りがない文章は全て当ブログのもの)
第1試合 日大山形4ー1米子東
日大山形が開幕試合を制した。
初回に1点を先制した日大山形は3回、佐藤・伊藤の連続タイムリーで2点を追加し3ー0とリードを広げ、6回にも斎藤のタイムリーで4-1として勝負を決めた。
日大山形先発の斎藤はヒットを許すものの、要所を締めて8回無失点だった。
一方敗れた米子東は、初回のチャンスを生かせず、相手に先制されて流れを失った。
米子東、長尾選手「大応援団の前で野球ができるのは幸せだと思った。応援が力となって最後の9回にチャンスを作れたと思う。」(8月11日・日刊スポーツより)
開幕試合は日大山形が制した。初日から混戦になると思っていたが、その予想は外れた。簡単なようで、難しい。
米子東打線は1~3回までの間、相手バッテリーに対して何とか粘る姿勢が見えたが、それ以降は粘りが消えたように思う。コンスタントにヒットは出ていたものの、チャンスで打てなかったり、ダブルプレーになったりする場面が目立った。
第2試合 静岡2ー4新田
夏の甲子園初出場の新田が勝利した。
新田は2回、向井のタイムリーで先制すると、6回には山内、8回には入山の2点タイムリー2塁打で4-1とリードして、そのまま勝利。県大会(3回戦以降)で先制すると必ず勝利する愛媛の新生が、新たなベールを脱いだ。
一方敗れた静岡は、7回に2点を返したものの、一歩及ばなかった。
静岡先発の高須投手「将来的にはプロで活躍したい」。プロか大学進学かは「これから考えます」と話した。(8月11日・日刊スポーツより)
この試合も第1試合と似ている。
勝利した新田は初回から粘って相手投手に3回で50球を投げさせた。
また変わった投手も1回平均15球以上は投げさせている。
一方静岡打線といえば、中盤での早いカウント勝負が痛い。4回はわずか6球、5回も13球で攻撃を終えている。もったいないのだ。
第3試合 日本航空4ー0東明館
13年ぶり出場の日本航空が完封勝利。2回戦へと駒を進めた。
両チーム無得点で迎えた6回、日本航空はダブルスチールで鮮やかに先制する。8回には2番森・3番エドポロ・4番泉の3連打で3点を追加し、勝負ありだった。
日本航空先発のヴァデルナ・フェルガスは東明館打線を完封。初戦突破は16年ぶりだった。
一方敗れた東明館は、あと一打が出なかった。
日本航空、ヴァデルナ・フェルガス
甲子園のマウンドは「思ったよりでかくてビビった」(8月11日・デイリースポーツより)
この試合では、試合に対する東明館の攻撃姿勢が露見してしまった。
0ー0で迎えた6回裏に日本航空は先制するが、問題はその後だ。
東明館は7回に四球でランナーを出すも、4人で終了。8・9回は三者凡退だった。しかも8・9回は打者6人が全員5球以内で打ち取られている。実際には分からないが、試合を諦めてしまったと言われても仕方がない。
ファウルで粘る、ランナーを出す。これができないと手ごわいピッチャーには歯が立たない。
ーこれより2日目ー
第1試合 倉敷商3ー10智弁学園
智弁学園が大勝した。
4回に2点を先制した智弁学園は5回、三垣のタイムリーなどで打者一巡の猛攻。7ー0とリードを大きく広げる。7回にも3点を追加して終わってみれば10ー3と大勝だった。
智弁学園先発の西村は8回無失点。次の試合も期待できる内容だった。
一方敗れた倉敷商は、2番手の永野が大量失点。悔しい結果に終わった。
智弁学園・小坂監督
「1巡目は相手のピッチャーに抑えられていて、2巡目になって絞り球が絞れてきた。いい形で点が入ったと思う」と打撃陣を評価。
「県予選からつなぐ野球でやってきた。甲子園は初戦が難しいので、(選手たちが)しっかり準備してプレーしてくれてよかった」と話した。
智弁学園・西村投手
「初回から飛ばした。相手ピッチャーに負けないという強い気持ちで臨んだ」という初回は三振の後ダブルプレー。その後はコンスタントに相手打者を打ち取った。
自分の持ち味はストレートの強さだといい、この試合ではそのストレートの「キレがあってよかった」と絶賛していた。
前日に監督から「完封しろ」と言われていたことを明かしたが「自分から(2番手の)藤本投手につなぐと伝えた。2年生につなげられてよかった」と話した。
そして「これからも一戦一戦一生懸命やります」と気持ちを切り替えていた。
倉敷商・梶山監督
「すべての面で通用しなかった。力負けです」と話した。
「4回に智弁学園の山下選手に(先制となるタイムリー2塁打を)打たれた後、(想定していた)投球のプランが崩れてしまった」とし、「相手打線はここぞという場面で打ってくる。そこにレベルの高さを感じた」と相手打線を称賛していた。
後に決勝へ進出する智弁学園。初戦から強力打線が火を噴いた。
4・5・7回に複数得点。5回は打者一巡であり、4~7番で点数を取る攻撃だった。さらに連打が5回。これをされたらたまったもんじゃない。
第2試合 横浜3xー2広島新庄
横浜が劇的なサヨナラホームランで白星スタート。
8回終了時点で0-1と1点ビハインドで9回を迎えた。広島新庄は9回に1点を追加し、0-2と勝負ありかと思われた。
ところが横浜は9回に2本のヒットで2死1・3塁のチャンスを作ると、1番の緒方が3点ホームランを放ってサヨナラ。劇的な幕切れとなった。
横浜・村田監督
サヨナラの瞬間を「緒方がしっかり打ってくれた」と回顧した。
何度もチャンスがあった中で、迷いがあったとし「(相手投手が)変化球を駆使して変幻自在の投球をしていて、その中でストレートもかなりキレがあった。思っていた以上に力があった」と話した。そのストレートになかなか対応できない中で選手たちに、「最後は思い切って行けと話した」と戦い方の意図を説明した。
サヨナラ打を打った緒方選手を「これからの成長にもつながる」と評価し、「これからも選手を信じて、一線必勝で戦っていく」と次の試合に臨む。
横浜・緒方選手
「3年生と1日でも長く野球をやりたい」と率直な気持ちを明かし、「人生で一番いい当たりだった」と打席を振り返っていた。
広島新庄・宇多村監督
サヨナラについて「打った(横浜の)緒方選手を褒めるしかない」と語った。
そして「相手打線を8回までよく抑えてくれた」と話したが、「9回にもう1点取れていればもう少し安心してピッチャーが投げられたかもしれない」と反省も忘れなかった。
この試合は5回以降の攻撃・流れと「先攻・後攻」が勝負を左右した。
勝利した横浜は5回、広島新庄に1点を先制される。しかし6~8回は横浜の先発・宮田が3人で攻撃を切っていった。一方横浜の攻撃は6・7回はそうでもなかったものの、8回は得点圏にランナーを進めた。
ところが広島新庄は9回に1点を追加してダメ押しにかかる。この時点で「勝負あり」と私も思っていたが、横浜の終盤での攻撃がその裏での「逆転サヨナラホームラン」につながったと考えられる。
第3試合 高岡商4ー17松商学園
松商学園が大量得点で2回戦進出を決めた。
相手のエラーなどが絡んで初回に4点を先制した松商学園は2回、4番斎藤がタイムリーヒットを放つなどして7点をリードする。その後も松商学園は9回までに17点を取って大勝した。
敗れた高岡商は3点を返すのが精一杯だった。
松商学園・足立監督
「初回から選手たちが平常心で臨んでくれた結果」と戦い方を評価した。
相手の投手に対しては「低めの変化球をいかに見送れるか」がカギで、「少し抜けてきた球に対しては積極的に行こう」と対策を練った。
次の試合に向けては「しっかりと準備をして自分たちの野球ができるようにコンディションを整えていきたい」と話した。
松商学園・織茂選手(5安打の活躍)
「チームの勝ちに貢献できてうれしい」と話しはじめ、「つなぐ意識で打てた」と自身の打撃を振り返った。
高岡商・吉田監督
「初回の4失点をしのげれば」。
失点は覚悟していたというが「あそこまで失点してしまうとは思わなかった」と驚いた様子だった。
「選手たちはあきらめずに頑張った。3年生に感謝したい」そう話していた。
この試合は序盤に松商学園が勝負を決めてしまった。
しかしこの試合はエラーの怖さを思い知らされた試合だった。エラーが絡んで失点するのは、チームの士気に大変大きく関わる。高岡商はエラーに次ぐエラー。それが松商学園打線を勢いづけてしまったのだろう。
第4試合 東北学院5ー3愛工大名電
東北学院は3回、山田のタイムリーと相手のエラーで3点を先制する。そして5回には木村と山田の連続タイムリーで5点をリード。そのリードを保って勝利した。
東北学院先発の伊東は9回を投げ切る力投。チームを勝利に導いた。
一方敗れた愛工大名電は、3回まで打線が沈黙。4回以降はあたりが出始めるも、反撃できなかった。
東北学院・渡辺監督
初めての甲子園を「信じられない」と振り返った。
中盤は苦しい場面が続いたが「突き放せなかったので、粘り強くしのいでくれた」と選手たちを褒めた。
守備については「よく集中して守った」とし、山田選手の先制タイムリーは「大きかった」と称賛していた。
そして、次の試合に向けては「精一杯良いところを引き出せるようにしていきたい」と次を見据えていた。
東北学院・伊東投手(9回完投)
「地方大会でも9回を投げぬいてきたが、甲子園では疲れが違う。チームとして打ち勝つ試合ができて良かった。自分の持ち味を発揮できた」と話した。
愛工大名電・倉野監督
「なかなかリズムに乗れなかった」。
「寺嶋に早く交代したが、低めの決め球を打たれてしまった。相手打線が(自分たちを)上回っていた」「東北学院はよく振れる選手がいて、いいチームだった」と話した。
この試合は先行逃げ切りを図った東北学院が一枚上手だった。
東北学院は3回裏に3点を先制するが、愛工大名電は4回表に1点を返す。流れが愛工大名電に行きかける展開。4回裏の東北学院の攻撃が3者凡退で終わったこともあり、東北学院劣勢とみていた。
しかし5回裏の3連打で流れを一気に引き戻した東北学院は称賛に値する。
このまま保った流れは試合終盤にも活き、勝利につながった。
また両チームの投手が最後まで投げ続けたこともある意味「流れを変えない」という意味で大きかった。
普通、ピッチャーが交代すると、打撃陣はある意味「開き直れる」。
今まで対戦していたピッチャーが交代したのだから。
その開き直りを利用して、攻撃を仕掛ける可能性も広がる。
しかしながらそれがないと、打撃を中心とした「流れの変え合い」になる。この試合はそれを象徴していた。
さて、このように2日目までは1日の順延があれど、日程は比較的順調に進んでいた。
度重なる順延が続くのはこの後。
次回は、この順延について振り返っていく。
次回に続く